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耐疲労鋼(FCA鋼:Fatigue Crack Arrester鋼)

疲労破壊を防ぐ〜あたらしい設計思想の厚板〜

「疲労破壊」という言葉を聞いたことがありますか?「金属疲労」とも言いますが、金属などの材料に繰り返して力がかかったときに、強度が落ちて亀裂が生じたり破壊したりする現象です。航空機やジェットコースターの事故で、金属疲労による破壊が原因だと報じられたこともありました。疲労破壊を防ぐことは、信頼性ある鉄の基本です。

船体に使われる厚板も、絶対に疲労破壊してはならない素材です。船は、数十年間使われるのが普通ですから、その材料である厚板の疲労強度はとても大切です。

厚板などの鋼材が、繰り返して力を受けた末に疲労破壊するには、パターンがあります。まず鋼材に顕微鏡レベルの微細な亀裂が入ります。それがさらに力を受けるうちに徐々に大きくなって、遂には鋼材の破壊に至るというものです。これを防ぐには「最初の微小亀裂が入らない」ことを狙う、というのが従来の疲労破壊に耐える鋼材の設計思想でした。当社はこれに「発生した微小亀裂が成長せず、破壊に至らない」という考え方を加えました。

溶接継手

もうひとつ、疲労に耐える鋼材には弱点がありました。鋼材本体の耐疲労強度は上げられても、溶接部の疲労強度はコントロールできないのです。厚板をはじめとする鋼材は、その製造過程で、溶けた鉄を固めた(凝固させた)あとで、赤熱状態で圧延や鍛造して「熱いうちに打つ」ことで鍛えてあります。ところが船をつくるにはこれを溶接しなければなりません。溶接部は、新たに溶けて固まった部分と、その熱の影響を受けた部分がとなり合わせになります。こういう複雑な組織の部位の疲労強度を高いレベルで保証するのはいままでは不可能でした。やむなく、船を設計する際には、溶接部の疲労破壊を防ぐために、鋼板を厚くしたり、添え木のような部材を加えたりして、その分だけ船は重く、高コスト化していたのです。

模式図 溶接部の金属組織例

住友金属は、これを一変させました。材料成分設計に新しい考え方をもちこむことで溶接部の疲労強度を高め、不可能を可能に変えたのです。新しい材料設計思想に基づいて開発された鋼材の名前は「FCA-W®」。Fatigue Crack Arrester、つまり疲労による亀裂を止める、という名前のついた厚板は「疲労亀裂の成長を抑える」「溶接部の疲労強度が高い」というふたつの特長を認められて、日本海事協会をはじめとした世界各国の船舶の規格認定を取得しつつあります。住友金属の厚板は、船の寿命を長くし、燃費を上げ始めています。

エネルギー・造船・建設分野
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